パスゴール理論で「事なかれ主義」を破壊せよ。DX時代の不動産経営に求められるリーダーの決断
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こんにちは、クラスコ代表の小村典弘です。
不動産業界は今、かつてないスピードで変化しています。人口減少による空室リスクの増大、賃貸ニーズの多様化、そしてテクノロジーによる業務の根本的な変革。
この荒波の中で、経営者やリーダーであるあなたに問いたいことがあります。
「あなたは今、部下や組織のために、ゴールへ続く『道(パス)』を明確に示せていますか?」
もし、日々の業務に追われ、摩擦を恐れ、現状維持を優先してしまっているなら、それは組織にとって最も危険な「事なかれ主義」という病にかかっているかもしれません。
今回は、ロバート・ハウスが提唱した「パスゴール理論」を紐解きながら、私たち不動産経営者が今こそ捨てるべき悪習慣と、手に入れるべき未来志向のリーダーシップについて、私の経験(DO IDEA)を交えて深く考察していきます。
1. なぜ今、不動産業界で「リーダーシップの変革」が急務なのか
かつての不動産業界は、極論を言えば「物件さえ持っていれば何とかなる」時代でした。良い立地にアパートを建て、待っていれば入居者が決まる。管理もクレーム対応さえしていれば回っていく。
しかし、現代は違います。
- 供給過多と人口減少: 選ばれる物件でなければ、瞬く間に負債化する。
- 情報の非対称性の解消: 入居者様はスマホ一つで物件の価値を見抜く。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の波: テクノロジーを活用できない企業は淘汰される。
このような環境下で、リーダーに求められるのは「管理」ではなく「変革」です。
従来のトップダウンで言われたことだけをやる組織では、変化のスピードについていけません。現場のスタッフ一人ひとりが自律的に動き、顧客満足度(CS)を高め、オーナー様の資産価値を最大化する提案ができなければなりません。
それを実現するためには、私たち経営者自身がアップデートする必要があります。古いOSのままでは、新しいアプリケーション(最新のテックや若手の感性)は動かないのです。
2. 組織を腐らせる「事なかれ主義」の正体
組織変革を阻む最大の敵。それは競合他社でも、市場環境でもありません。
それは、組織内部に蔓延する「事なかれ主義」です。
「事なかれ主義」とは何か?
事なかれ主義とは、問題が発生してもそれを直視せず、「波風を立てたくない」「穏便に済ませたい」と考え、本質的な解決を先送りする態度のことです。一見、平和に見える職場かもしれません。しかし、それは「死に至る静寂」です。
不動産現場における「事なかれ主義」の弊害
私の経験上、この姿勢は以下のような形で現れ、経営に深刻なダメージを与えます。
- オーナー様への提案不足:
「リノベーションを提案するとお金の話になるから気まずい」と、空室対策の提案を避け、結果としてオーナー様の収益を損なう。 - 部下へのフィードバック回避:
「厳しく言って辞められたら困る」と、必要な指導をせず、社員の成長機会を奪う。 - デジタル化への抵抗:
「今のやり方でも回っているから」と、新しいシステムの導入を拒み、生産性を著しく低下させる。
「自分のことしか考えていない、嫌なことはしたくない」
厳しい言い方ですが、事なかれ主義の本質はここにあります。これでは、部下との信頼関係も、お客様との信頼関係も築くことは不可能です。リーダーがリスクを避けて隠れている間に、市場は私たちを置いてきぼりにします。
3. 成果を出すリーダーの羅針盤「パスゴール理論」とは
では、事なかれ主義を脱却し、私たちはどのようなリーダーシップを目指すべきか。
ここで非常に有効なのが、ロバート・ハウスが提唱した「パスゴール理論」です。
この理論の核心はシンプルです。
リーダーシップの本質は、部下が目標(ゴール)を達成するために、どのような道筋(パス)を通れば良いのかを示すことである。
つまり、リーダーの役割とは「命令すること」ではなく、「目標への経路をスムーズにしてあげること」です。
部下の前に立ちはだかる障害物(知識不足、自信喪失、リソース不足、非効率なルール)を取り除き、ゴールへ走りやすく整地する。これこそが、私が考える「サーバントリーダーシップ」にも通じる、真の経営者の姿です。
4. 4つのスタイルで不動産現場を変える具体的戦略
ハウスは、状況に応じてリーダーシップを4つのスタイルに使い分けるべきだと説いています。これを不動産経営の現場に当てはめてみましょう。
① 指示型リーダーシップ (Directive Leadership)
特徴: 具体的な指示を出し、スケジュールを管理し、期待を明確にするスタイル。
有効な場面: 経験の浅い新人スタッフへの指導や、繁忙期などの緊急時、または全く新しいITツールを導入する初期段階。
【不動産現場での実践例】
新卒社員に対し、「とにかく頑張れ」ではなく、「まずはこのエリアの物件相場を把握するために、〇〇のデータを10件入力しよう。期限は明日の15時まで」と、迷わせないための具体的な道筋を示すこと。これが「優しさ」です。
② 支援型リーダーシップ (Supportive Leadership)
特徴: メンバーの感情に配慮し、ニーズを気遣い、働きやすい環境を作るスタイル。
有効な場面: ストレスが高い業務、ルーチンワークでモチベーションが低下している時、あるいは部下が自信を失っている時。
【不動産現場での実践例】
クレーム対応で疲弊している管理スタッフに対し、まずは「大変だったね」と共感を示す。そして、心理的安全性を確保した上で、次はどうすれば再発を防げるかを一緒に考える。事なかれ主義の上司は、ここで「うまくやっておいて」と逃げます。支援型リーダーは「一緒に背負う」姿勢を見せます。
③ 参加型リーダーシップ (Participative Leadership)
特徴: 意思決定のプロセスに部下を巻き込み、彼らの提案やアイデアを活用するスタイル。
有効な場面: 部下の能力が高く、専門知識を持っている場合。あるいは、新しい企画(リノベーションのデザインや集客キャンペーン)を立案する時。
【不動産現場での実践例】
「次の空室対策キャンペーン、どうすれば反響が増えると思う?」と現場の意見を求める。クラスコでも、若手社員のアイデアから生まれたリノベーションデザインが数多くヒットしています。彼らの当事者意識(オーナーシップ)を引き出すには、決定プロセスへの「参加」が不可欠です。
④ 達成志向型リーダーシップ (Achievement-oriented Leadership)
特徴: 困難だが挑戦的な高い目標を設定し、部下がそれを達成できると信じて全力を尽くすよう求めるスタイル。
有効な場面: 意欲的で能力の高いハイパフォーマーや、組織全体で大きな変革(DXなど)を目指す時。
【不動産現場での実践例】
「入居率98%を目指そう」「業務時間をテクノロジーで半分にし、その分オーナー様への提案時間を倍増させよう」といった高いビジョンを掲げる。ここで重要なのは、無理難題を押し付けるのではなく、「君たちならできる」という信頼をセットで伝えることです。
5. DO IDEA:摩擦を恐れず「道」を切り拓くために
私は常々「DO IDEA(アイデアを実行する)」ことの重要性を説いています。
アイデア自体には価値がありません。それを実行し、形にして初めて価値が生まれます。
しかし、新しいアイデアを実行しようとすると、必ず「摩擦」が起きます。
- 「今まで通りでいいじゃないですか」という現場の反発
- 「失敗したらどうするんだ」という周囲の不安
- システム導入に伴う一時的な業務負荷の増大
事なかれ主義のリーダーは、この摩擦を恐れてアイデアを葬り去ります。
一方で、パスゴール理論を実践するリーダーはこう考えます。
「この摩擦こそが、ゴールへ向かうための通過儀礼(パス)である」と。
私たちクラスコが、アナログな不動産業界でいち早くテック化を進め、業務効率を劇的に改善できたのは、私が摩擦を愛したからではありません。「未来というゴール」のために、摩擦を取り除く、あるいは乗り越えるための道筋を示し続けたからです。
部下が「やり方がわからない」と言えば教え(指示型)、「怖い」と言えば寄り添い(支援型)、「もっと良くしたい」と言えば意見を聞き(参加型)、「世界を変えたい」と言えば高い山を示す(達成志向型)。
リーダーであるあなたが、カメレオンのように柔軟にスタイルを変えながら、ゴールへの道を照らし続ける。それが私の考える「経営」です。
6. 経営者が今すぐ実践すべき3つのアクション
理論は実践してこそ意味があります。明日から会社で実践できる具体的なアクションプランを提示します。
ACTION 1:自分の「事なかれ度」をチェックする
胸に手を当てて考えてみてください。
「最近、部下に耳の痛いことを言いましたか?」
「最近、言いにくい提案をオーナー様にしましたか?」
もしNOであれば、あなたは無意識にトラブルを避けています。まずは週に1回、「避けていた課題に向き合う時間」をスケジュールに入れてください。
ACTION 2:部下の「障害物」を聞き出す
1on1ミーティングなどで、部下にこう問いかけてください。
「あなたが目標を達成する上で、今一番邪魔になっている障害物は何?」
それが古いPCなのか、複雑な承認フローなのか、知識不足なのか。答えが返ってきたら、それを除去するのがあなたの仕事です。これこそがパスゴール理論の実践です。
ACTION 3:小さな「成功の道筋」を作って見せる
いきなり大きな改革は難しいかもしれません。まずは小さなプロジェクトで、「こうすれば上手くいく」という道筋(パス)を示し、成功体験(ゴール)を味わわせてください。
例えば、「このツールを使ったら、入力作業が1時間から10分になった」という実績を作る。部下が「リーダーの言う通りに進めばゴールに着けるんだ」と信じられるようになれば、組織の馬力は一気に上がります。
7. まとめ:リーダーの仕事は「障害物」を取り除くこと
パスゴール理論が教えてくれるのは、リーダーシップとは「カリスマ性」や「権力」ではないということです。
リーダーシップとは、「奉仕」であり「整地」です。
不動産業界の未来は、決して暗いものではありません。テクノロジーを活用し、住まい手とオーナー様をつなぐ新しい価値を創造できる、可能性に満ちたフィールドです。
しかし、そのゴールにたどり着くには、荒れた道を切り拓くリーダーが必要です。
事なかれ主義で、嵐が過ぎるのを待つだけの経営者は、いずれ沈む船と共に運命を共にすることになります。
嵐の中で舵を取り、クルー(社員)に航路(パス)を示し、宝島(ゴール)へと導く。
そんな気概を持った経営者が一人でも増えることを、私は願っています。
共に、不動産業界の新しい道を創っていきましょう。
経営課題を解決するヒントがここに
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