不動産業界の「採用難・属人経営」に終止符を|「企業OS」と「AI全社実装」による不動産会社の成功法則
- 不動産会社
不動産業界は今、大きな転換点に立っています。 従来のやり方が通用しなくなった時代に、経営者は何を考え、どう動くべきか。2025年11月に開催した「TATSUJIN SUCCESS SUMMIT 2025」での知見をもとに、私、小村典弘が不動産経営の未来を切り拓く「答え」を提示します。
目次
1. 不動産業界を襲う「2つの死角」と、今求められるパラダイムシフト
皆さん、こんにちは。クラスコの小村典弘です。
現在、不動産業界を眺めてみると、非常に厳しい局面を迎えていることを痛感します。人手不足、働き方改革、建築資材の高騰、そして顧客ニーズの多様化。これらは一時的なトレンドではなく、私たちの経営の根幹を揺るがす構造的な変化です。
特に深刻なのが、「採用難」と「属人経営」という2つの課題です。
これまで多くの不動産会社は、いわゆる「カリスマ営業マン」や「経験豊富なベテラン」の個人の能力に依存してきました。しかし、この「個の力」に頼り切る経営は、もはや限界を迎えています。
なぜなら、今の若手人材、いわゆるデジタルネイティブであるZ世代は、「背中を見て盗め」という古い教育観を求めていないからです。彼らが求めているのは、「明確なビジョン」「成長できる仕組み」「生産性の高い環境」です。これらが整っていない企業からは、容赦なく人が去っていきます。
一方で、経営者の多くは「人がいない、いい人が来ない」と嘆きます。しかし、厳しい言い方かもしれませんが、それは「選ばれない理由が自社にある」ことに他なりません。
私が代表を務めるクラスコでは、この状況を打開するために「DO IDEA(実行するアイデア)」という哲学を掲げています。ただ考えるだけでなく、圧倒的なスピードで実行し、業界の「当たり前」を再定義すること。今、私たち不動産経営者に求められているのは、従来の「不動産屋」としての思考を捨て、テクノロジーとデザインを武器にした「サービス業」「クリエイティブ業」へとパラダイムシフトすることなのです。
2. 「企業OS」のアップデート:Z世代に選ばれ、人が育つ組織の作り方
私が「TATSUJIN SUCCESS SUMMIT 2025」で最も強く訴えたのが、「企業OS」のアップデートです。
パソコンやスマートフォンにOS(基本ソフト)があるように、企業にもOSが存在します。どれだけ優れた最新のAI(アプリケーション)を導入しようとしても、ベースとなる企業のOSが古ければ、それは正しく動作しません。
かつての不動産業界のOSは、「気合と根性」「長時間労働」「属人的な勘」でした。しかし、これからの時代に必要なOSは、「誰がやっても成果が出る仕組み」です。私が提唱する次世代型OSには、6つの構成要素があります。
① VISION(ビジョン):共感を呼ぶ旗印
単なる数値目標ではなく、「なぜこの会社が存在するのか」という社会的意義を定義し直す必要があります。Z世代は、自分の仕事が誰の役に立っているのかという「意味」を重視します。ワクワクする未来を言葉にできているか、それが経営者の第一の仕事です。
② 成長(教育):企業内大学の構築
「見て盗め」を廃止し、未経験者が3ヶ月で戦力化する学習システムを構築することです。クラスコでは、動画マニュアルやオンライン学習を活用した「企業内大学」の仕組みを推奨しています。教育の属人化を防ぐことが、組織の安定に直結します。
③ 認知度(ブランド):視覚的統一(VI)
ブランドとは「信頼」です。ロゴ、名刺、看板、店舗デザインがバラバラであれば、それだけで信頼を損ないます。「この会社なら安心だ」と思わせる視覚的な統一感は、顧客だけでなく、求職者に対する強力なメッセージになります。
④ オフィス(環境):幸福度と生産性
もはやオフィスは単に作業をする場所ではありません。「暮らすように過ごせる場所」であり、クリエイティビティを刺激する空間であるべきです。オフィスへの投資は、社員のエンゲージメントを高め、離職率を下げる最も費用対効果の高い投資の一つです。
⑤ 働く条件・肩書き:使命感の設計
単なる「営業」や「事務」ではなく、その仕事の価値を誇れるような肩書きや、ライフスタイルに合わせた柔軟な制度設計が必要です。「ここで働く自分を好きになれるか」という視点が不可欠です。
⑥ プロモーション:魅力を可視化する発信力
良いことをしていても、伝わらなければ存在しないのと同じです。SNSやHPを通じて、自社の文化や想いを言語化し、発信し続けること。これが、「自ら応募してくる人材」を惹きつける磁石になります。
これら6つを統合した「企業OS」を構築することで、「人が変わっても成果が出続ける組織」へと変貌を遂げることができます。これは、属人経営からの完全な脱却を意味します。
3. AI全社実装の衝撃:年間2万時間を削減し、創造的な時間を生み出す技術
「企業OS」が整ったら、次に行うべきは「AIの全社実装」です。
現在、多くの不動産会社がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいますが、その多くは「ITツールの導入」に留まっています。私が言いたいのは、ツールを使うことではなく、「AIを社員の一員として組み込む」ということです。
クラスコの実例をお話ししましょう。私たちはGoogle WorkspaceとGemini(AI)を連携させ、日常業務のあらゆる場面でAIを活用しています。その結果、どうなったか。
なんと、年間で22,862時間、金額にして約6,860万円相当の業務削減に成功したのです。
AIに任せているのは、以下のような業務です。
- 物件確認の自動化
- 契約書や重要事項説明書の草案作成
- 顧客への提案メールの自動生成
- 市場分析データのリサーチと集計
- 社内会議の議事録作成とタスク抽出
これらはすべて、人間がやる必要のない「定型業務」です。AIにこれらを任せることで、社員は「オーナーへの深い提案」や「入居者への心のこもった対応」といった、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中できるようになりました。
「AIは人の仕事を奪うものではなく、人を自由にするもの」です。
AIを導入することで、残業が減り、社員の満足度が上がり、さらに顧客へのサービス品質も向上する。この正のスパイラルを生み出すことこそが、DXの本質です。
「うちはアナログだから」「AIは難しそうだから」と敬遠している間に、格差は取り返しのつかないほど開いていきます。今すぐやるべきは、「全社員がAIを触り、業務を1分でも短縮する工夫を毎日続ける」という文化を作ることです。
4. 成功企業が証明した「5つの法則」:離職率0%・売上130%増の裏側
今回のサミットでは、実際に「企業OS」と「AI」を活用して驚異的な成果を上げた5社の事例を発表しました。彼らの取り組みを分析すると、共通する「5つの成功法則」が見えてきます。
【成功を導く5つの連鎖】
- 方向性の明確化: ビジョンとブランドを一致させ、迷いをなくす
- 価値の創造: 選ばれるための強力な武器(商品・サービス)を作る
- 徹底した「見える化」: デザインの力で価値を一瞬で伝える
- 仕組み(OS)への転換: 誰がやっても勝てるフローを構築する
- 採用と育成への投資: 教育環境を整え、文化を醸成する
例えば、東京都町田市の株式会社きめたハウジング様。「きめたで決めた!」というキャッチコピーとともに、会社と物件のブランディングを一新しました。その結果、売上130%増、反響数153%増を達成し、採用では募集枠を超える25名もの応募が殺到しました。
島根県松江市の有限会社朝日住宅様は、人口減少エリアという厳しい環境下にありながら、ビジョンの刷新と教育システムの導入により、ネガティブな離職をゼロにしました。管理受託のペースも飛躍的に向上しています。
また、愛知県清須市の株式会社ウィズコーポレーション様は、徹底した業務の仕組み化と、リノベーション事例を見せる「満室ギャラリー」という武器を駆使し、管理戸数を2.6倍に拡大させながら、離職率0%を維持しています。
これらの事例に共通しているのは、「経営者の覚悟」です。過去の成功体験を捨て、新しい仕組みを信じて投資し、社員と共に変革を楽しんだ企業が、今の勝者となっています。
5. 【実践】経営者が明日から取り組むべき3つのアクションプラン
ここまで読んでくださった皆さんに、今すぐ実践していただきたい具体的なアクションを3つ提示します。
アクション1:自社の「強み」と「弱み」を言葉にする
まず、自社のどこが「属人的」になっているかを書き出してください。その中で、仕組み化できるものは何か。また、自社のビジョンは今の時代に合っているか。「言葉にする」ことが、変革の第一歩です。
アクション2:AIの「成功体験」を一つ作る
いきなり全社導入は難しいかもしれません。まずは経営者自身、あるいはリーダーが、AI(GeminiやChatGPTなど)を使って一つの業務を完了させてみてください。「メールの返信案を作らせる」だけでも構いません。「AIは使える」という確信を持つことが重要です。
アクション3:デザイン(見た目)への投資を検討する
名刺一刷り、HPのメインビジュアル一つで、会社の印象は劇的に変わります。デザインは「飾り」ではなく、「価値を伝えるための戦略」です。古くなった看板やチラシを見直し、今の時代の感性に合っているかをチェックしてください。
6. まとめ:DO IDEAが不動産業界の未来を創る
不動産業界は、これまで非常にコンサバティブ(保守的)な業界でした。しかし、その分、「変革の余地」がどこよりも残されている業界でもあります。
「企業OS」をアップデートし、AIを使いこなし、デザインの力で価値を伝える。これらは決して難しいことではありません。必要なのは、新しいものを受け入れる柔軟性と、それを即座に実行に移す「DO IDEA」の精神です。
私たちは、TATSUJINというサービスを通じて、全国の不動産会社がより高い収益を上げ、より楽しく働ける環境を作りたいと考えています。今回のサミットで見た210名の参加者の熱気こそが、業界が確実に変わり始めている証拠です。
「採用難だからできない」のではなく、「仕組みがないから採用できない」のです。
「人が足りないから忙しい」のではなく、「AIを使っていないから忙しい」のです。
視点(OS)を変えれば、世界は一変します。
共に、不動産業界の新しいスタンダードを創っていきましょう。
株式会社クラスココンサルファーム
代表取締役社長 小村 典弘



























